第535話こんな心で騙されるのも無理はない

アクセルが口をついて出たように言った。「まだいたのか? もう帰ったと思ってた。何かほかに用でも?」

カリスタは、アクセルがゾーイと電話しながら何度も笑うのを、たった今見たばかりだった。

ところがいま、自分と向き合った彼は、どこかよそよそしく、苛立っているように見える。胸の奥が矢で射抜かれたみたいに痛んだ。

問いただしたかった。ほかの女と話しているとそんなに楽しいのに、私が少し長くいるだけで、そんなに不機嫌になるの?

なにしろ、自分は彼の婚約者なのだ。

けれど結局、それを口にする勇気はなかった。

爪が掌に食い込むのを感じながらも、カリスタは笑みを崩さず答えた。「ううん、何でもないの。...

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